加熱式タバコ・電子タバコの全身および口腔領域への影響について
新型コロナウィルス感染の影響で年内の学会は軒並み中止,当分study at homeですがそんな中歯科商業誌に掲載された歯周病治療の天敵でもあるタバコ(加熱式・電子タバコ)についての特集をご紹介しましょう。
歯界展望Vol.135 No.1 2020-1 神戸常盤短期大学口腔保健科 柳田学
従来のタバコ(紙巻タバコ)は7000種類以上の化学物質が生産されそのうち70種類以上が発がん性を有する有害物質であります。それを知ってか加熱式タバコに変える患者様もちらほら・・・では加熱式・電子タバコは無害なのでしょうか?
加熱式タバコについて:煙が出ないをうたい文句で販売されてますが実際にはエアロゾルが放出されてます。それに含まれるニコチン量は紙巻タバコから発生する主流煙の57~84%、発がん性物質であるホルムアルデヒド、アセトアルデヒドも紙巻たばこほどではありませんが検出されてます。煙は見えなくとも無害ではなさそうです。
健康への影響については血管内皮細胞の機能を抑制、炎症性サイトカインの発現、細胞外基質の放出、ミトコンドリアの機能への影響、歯肉上皮細胞にもなんらかの影響を及ぼしているようです。
電子タバコについて:ニコチンを含有する電子タバコは日本では販売許可されていないものの加熱式同様エアロゾルの発生によりホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、刺激性を有するアクロレインの発生を認めます。
また、高濃度の銀・鉄・アルミニウム・ケイ素・スズ・クロム・ニッケルのナノ微粒子を含みニッケルは紙巻タバコの2~100倍の濃度で金属微粒子は呼吸器系、神経系疾患の罹患リスクを高める可能性があります。添加物であるフレーバー(香料)のいくつかは毒性を有することも報告されてます。
マウスを用いた動物実験では胎児、新生児の脳内代謝は攪乱され炎症性サイトカインの産生に変調をきたすようです。またマウスの肺・心臓・膀胱においてDNAが損傷されたり口腔内領域ではヒト歯肉繊維芽細胞、ヒト歯根膜細胞の細胞生存率を低下させるようです。
歯周病的にも非喫煙者と比較してプラーク指数、歯周ポケットの深さは有意に高く、インプラント周囲への炎症性サイトカイン濃度は非喫煙者より有意に高いことが示されてます。驚くことにリチウムバッテリーを使う電子タバコが爆発し使用者やその周囲の人が火傷など受傷についても報告されてます。
どうやら従来の紙巻タバコ同様加熱式・電子タバコ共に歯科治療にとっても全身の健康にとっても百害あって一利なしのようですね