予防歯科治療

せっかく治療したのにまた虫歯…ついこの間歯石とったばかりなのに…
そんな疑問抱いたことありませんか?予防歯科治療はまず患者様自身が何故簡単に病気が再発するのか、その原因を理解、自覚することから始まります。
虫歯も歯周病も細菌が原因です。毎日の歯磨きも一つの予防治療かもしれません。では何故病気が再発してしまうのでしょうか。 一番大きな原因は細菌が残っているからです。様々な研究から虫歯も歯周病も一つの細菌が原因でなく数種類の細菌が関係していることが明らかになっています。また口の中には400~500種類もの細菌がいるとも言われ、患者様の中には数週間で歯に歯石が付いてしまう方もいます。

では、毎日の歯磨きではなかなか磨きにくい部位を具体的に挙げてみましょう。

このように口の中の環境は人によって様々です。一人一人の患者様の細菌学的リスクに応じて歯科医師、歯科衛生士が徹底的に除菌を行う治療が予防歯科治療です。

場所により異なった器具を使い分け細菌を除去しております。
”特に次に掲げる条件に該当する患者様は要注意です。”

  1. 毎日しっかり磨いているはずなのに検診時に必ず虫歯・歯周病を指摘される方
  2. 歯磨き指導時、毎回決まった場所に磨き残しがあると指摘される方
  3. 何らかの理由で毎日時間をかけてブラッシング出来ない方
  4. 歯並びの悪い方
  5. 義歯を装着されている方
  6. インプラント(人工歯根)治療をされた方また矯正歯科治療中の方
  7. ブラッシング自体が面倒だ・・・と感じている方
  8. 降圧剤・・・など薬を毎日服用されている方
  9. 間飲食の頻度の多い方
  10. 喫煙者

などが挙げられます。

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予防歯科治療、その前に…

フッ化物応用の効果的な使い方

虫歯予防に欠かせないフッ素、今や積極的な予防剤としてその効果のほどは既に実証済みですがここでその効果的かつ正確なフッ化物応用についてご説明いたします。特に、虫歯リスクの高い患者様・幼いお子様をお持ちの方・ご高齢者の方は必見です!

ここではフッ化物応用を2つのポイントに絞ってみましょう。

  1. ご家庭or歯科医院で使用するフッ化物の濃度、使用方法を知る
  2. 年齢に応じたフッ化物の応用について
ご家庭でのフッ化物応用について

ご家庭でのフッ化物応用のゴールドスタンダードと言えばフッ化物配合ペーストですが、予防効果25~40%と高い予防効果もその使用方法を誤ると期待した効果は望めません。
推奨される効果的なその使用方法をご覧下さい。

ご家庭用のフッ化物配合歯磨き剤の効果的な使用方法
  1. 年齢に応じた量のペーストをつける
  2. ペーストを歯面全体に広げる
  3. 2~3分間泡立ちを保つように磨く
  4. ペーストを吐き出す
  5. 10~15ml少量の水を口に含む
  6. 約5秒間ブクブクうがいをする
  7. うがいは1回だけ
  8. 1~2時間程度は飲食をしない

日本国内でペーストに配合されてるフッ化物はモノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)、 フッ化ナトリウム、フッ化第一スズの3種類です。
その上限濃度は1000ppmと規定され500ppm未満のフッ化物配合ペーストの虫歯予防効果は明らかにされておりませんのでご注意を。その確認は成分表示で出来ます。また使用するペーストの量も重要です。年齢別の使用量とそのフッ化物イオン濃度も併せてチエックしてみましょう。

年齢 使用量 歯磨剤のフッ化物濃度
6カ月(歯の萌出)~2歳 切った爪程度の少量 500ppm
(泡状歯磨剤であれば1,000ppm)
3歳~5歳 5mm以下 500ppm
(泡状またはMFP歯磨剤であれば1,000ppm)
6歳~14歳 1cm程度 1,000ppm
15歳以上 2cm程度 1,000ppm
当医院で推奨使用しておりますご家庭用フッ化物配合歯磨剤ラインナップ
  • 大人用フッ化物配合歯磨剤
    (950ppmF フッ化ナトリウム配合)
  • 子供用フッ化物配合歯磨剤
    (950ppmF フッ化ナトリウム配合)
子供・高齢者用フッ化物配合歯磨剤(特に吐き出しが出来ない低年齢児、高齢者向き)
  • ジェルタイプ
    (950ppmFフッ化ナトリウム配合)
  • フォームタイプ
    (950ppmF フッ化ナトリウム配合)
  • 象牙質知覚過敏用フッ化物配合歯磨剤
    (950ppmF フッ化ナトリウムに加え刺激遮断効果を期待した5%硝酸カリウム配合)

歯科医院でのフッ化物応用について

ご家庭でのフッ化物配合ペーストの使用目的が初期虫歯の再石灰化促進作用である一方、歯科医院でのフッ化物応用は唾液を介さずに歯の表面に高濃度のフッ化物を作用させることで酸に溶けにくい歯質に改善することを目的とし、その応用方法は歯科医師、歯科衛生士によるフッ化物歯面塗布です。
虫歯リスクに応じて年2~4回の応用が一般的なので使用されるフッ化物は9000ppmFと高濃度で全てプロユースとなります。
特に乳歯・永久歯の生え始めたばかりのお子様、歯並びが悪くご家庭でのフッ化物効果にむらが生じやすい方、歯肉が下がり虫歯抵抗性に乏しい歯根面が露出されている方、矯正歯科治療中の方、身体的ハンディーキャップにより満足なブラッシングが行えない方などが適応となります。
以上、最も効果的なフッ化物応用はご家庭での“低濃度多数回応用”のフッ化物歯磨剤と定期検診を兼ねた継続的な“高濃度少数回応用”のフッ化物歯面塗布を併用導入することで相乗効果が期待出来ます。

当医院で使用しておりますフッ化物歯面塗布剤

  • フォームタイプ
    (9000ppmF フッ化ナトリウム配合、
    中性なのでインプラント患者様への応用も可能です)
  • ジェルタイプ
    (9000ppmF フッ化ナトリウム配合)
  • バーニッシュタイプ
    (22500ppmF フッ化ナトリウム配合)
    歯面への停滞性に優れています

その他フッ化物応用にフッ化物洗口法があります。濃度も450ppmFと歯磨剤より低濃度ですが吐き出し可能な方のみ推奨されますので、特に小さなお子様への使用には保管も含め注意が必要です。
当医院ではどうしてもブラッシング後に十分なうがいをしたい方にお勧めしております。当然使用後のうがいは厳禁です。

当医院で使用しておりますフッ化物洗口液

450ppmF フッ化ナトリウム配合

年齢に応じたフッ化物応用について

従来のフッ化物応用はうがいが出来るようになる3~4歳頃とされておりましたが、2010年、日本口腔衛生学会は乳歯の生え始直後(保護者による仕上げ磨き)から生涯を通して高齢期までとしました。

洗口液の種類とその効果

ドラッグストアやコンビニエンスストアに整然と並んでいる青、緑、黄色とカラフルな洗口液、どの商品を購入したらいいのか迷うところです。そこで洗口液の種類とその効果を簡単にまとめてみました。
プラークコントロールと言えば毎日のブラッシング、そのブラッシングと併用することで化学的に付着プラークを除去、あるいはプラーク形成を抑制することが洗口液の使用目的ですが各社製品の特徴をみてみましょう。

製品名 リステリン
効能・効果
  • 歯肉炎予防→歯肉炎発生を最大36%抑制
  • 口臭の防止→3時間持続
  • 口中を浄化、爽快にする
  • 歯石沈着を防ぐ(ターターコントロールのみ)
有効成分
  • 1,8-シネオール→抗ウィルス作用
  • サリチル酸メチル→血行促進、鎮痛消炎作用
  • チモール→フェノールやクレゾールよりも高い殺菌力
  • l-メントール→殺菌・防腐・鎮痛・鎮痒作用
  • 塩化亜鉛(タータコントロールのみ)
特徴 バイオフィルム(細菌の塊)に浸透し殺菌することがリステリンの最大の特徴。
製品名 モンダミン
有効成分と特徴 3商品共通の薬用成分CPC(塩化セチルピリジニウム)による口腔内殺菌、それに加えデンタルマニュキアには天然光沢成分”セラック“によるマニュキア効果で白い歯にツヤと輝きを与え、メディカルケアには抗炎症成分GK2(グリチルリチン酸ジカリウム)により歯肉の腫れ、炎症を防ぎ歯肉からの出血を防ぐ為の出血予防成分TXA(トラネキサム酸)を含む

※モンダミンは化粧品扱い商品と医薬部外品扱い商品とありますので、ここでは医薬部外品のみ提示します。

製品名 ガム・デンタルリンスナイトケア
効能・効果 口臭の防止、出血予防、歯肉炎予防
有効成分と特徴
  • 薬用成分CPC(塩化セチルピリジニウム)が歯周病原因菌を殺菌、歯肉炎の炎症も防ぐ
  • 薬用成分TXA(トラネキサム酸)が歯肉炎に伴う出血を防ぐ
製品名 薬用ピュオーラ洗口液
効能・効果 歯垢の付着防止、歯肉炎予防、口臭予防
有効成分と特徴
  • 清浄剤エリスリトールが細菌の集合体に浸透、分散しやすくして口中を洗浄。
  • W洗浄剤(グリセリン脂肪酸エステル+ショ糖脂肪酸エステル)が口全体の細菌やタンパク汚れを洗浄
  • 殺菌剤CPC(塩化セチルピリジニウム)+TC(トリクロサン)が歯周病原因菌を殺菌、歯垢の再付着を防ぐと共に歯肉炎・口臭を予防
製品名 クリアクリーンデンタルリンス
効能・効果 歯垢の付着を防ぐ、歯肉炎の予防、口臭防止
有効成分と特徴
  • 薬用成分BTC(塩化ベンゼトニウム)が口中のすみずみに行き渡り歯の隙間まで長時間殺菌コート
  • 原因菌の繁殖を抑え歯垢の付着を防ぐと共に歯肉炎・口臭を予防
製品名 クリニカクイックウォッシュ
効能・効果 歯垢沈着の予防及び除去、むし歯を防ぐ、口中浄化、口臭予防
有効成分と特徴 薬用成分デキストラナーゼ酵素が歯垢そのものを分解、除去してむし歯・口臭を予防
製品名 オーラツーブレスファインマウスウォッシュ
効能・効果 口臭を防ぐ、口中浄化
有効成分と特徴
  • 洗浄強化成分(アルキルリン酸エステル)が歯垢のもとなどの汚れを柔らかくし浮かせて洗い流す
  • 2つのニオイ吸着成分(オドリコソウエキス、シクロデキストリン)がにおいのもとを吸着除去
製品名 デンターシステマEXデンタルリンス
効能・効果 歯肉の炎症を抑制、口臭予防、むし歯予防
有効成分と特徴
  • 薬用成分ε-ACA(イプシロン-アミノカプロン酸)が歯肉の炎症を抑制
  • 薬用成分IPMP(イソプロピルメチルフェノール)とLSS(ラウロイルサルコシンナトリウム)が口臭原因菌を殺菌し口臭を予防、むし歯原因菌を殺菌しむし歯を予防

このように各社薬用成分の効果は様々ですがあくまでもプラークコントロールの基本はブラッシングです。商品の中には液体ハミガキ表示されているものもあるように洗口液の効果はブラッシングとの併用により発揮され”洗口液を使えばブラッシングしなくてもよい”ではなくあくまでも補助的なものです。
また薬用成分のCPC(塩化セチルピリジニウム),BTC(塩化ベンゼトニウム)は歯磨き剤に含まれるラウリル硫酸ナトリウムによりその殺菌効果が低下しますのでよく口をゆすぐか時間をおいてからの使用をお勧めします。

キシリトールのう蝕予防効果について

1997年に厚生労働省が食品添加物として認可したキシリトール、虫歯予防に効果的であることはCM等で知られているところですがフッ化物の予防効果の認知度に比べるとまだ低いのが現状ではないでしょうか。
手軽に入手可能な今、虫歯予防に繋がるようその特徴を見てみましょう。

キシリトールの抗う蝕作用機構とは
  1. う蝕病原性細菌は他の炭水化物や代用甘味料と同じようにはキシリトールを代謝できず酸を産生できない
  2. う蝕病原性細菌がキシリトールを代謝してエネルギー源にできないことは、それらの病原性細菌が増殖できない事を意味する。それによって、プラーク中のう蝕病原性細菌の割合を減少させる可能性がある
  3. キシリトールの甘みにより、唾液流出量が増加し傷ついた歯のエナメル質に修復が促される
その他にフッ化ナトリウムと併用した時の相乗効果もあり抗う蝕効果が12%向上したとの研究もあります。
キシリトールの抗う蝕作用機構とは

キシリトールによる主なう蝕病原性細菌であるミュータンスレンサ球菌数の減少は短期摂取(1週間~1ケ月)に見られる一方3ケ月以上の長期摂取ではその菌数の減少よりそのミュータンスレンサ球菌の質の改善が図られる事が分かっております。

その質の改善とは…

ミュータンスレンサ球菌の約90%はキシリトールに反応し酸を産生せずまた菌数も減少する、いわゆるキシリトール感受性菌ですが残りの10%のミュータンスレンサ球菌は先天的にキシリトールに非感受性で酸を産生、菌数も減少しないタイプであることが判明しております。
キシリトール短期摂取により非感受性菌の割合が90%と逆転しますが非感受性菌は感受性菌に比べ歯への付着力が低いので歯面から簡単にはがれ、また酸産生も少ないことが証明されております。言うまでもなくこの質の改善は虫歯予防にとっては明らかにプラスに働くと思われます。この長期摂取とは100%キシリトール配合ガムを1日3回3ケ月噛み続けること、その後3ケ月キシリトール摂取を止めてもう蝕抑制効果が持続する事をTurku大学歯学部Alanen教授が報告しております。

また、キシリトールの唾液への効果についてこのような研究もあります。

Efects of xylitol chewing gum on salivary flow rate,pH,buffering capacity and presence of Streptococcus mutans in saliva
M.Ribelles Llop, European Journal of Paediatric Dentistry vol11/1 2010

この研究は6~12歳の子供90名を2つのテストグループとコントロールグループそれぞれ30名ずつ3つのグループに分けテストグループ1,2はベースラインとして5分間ロウの塊を噛み5分間の刺激時唾液を採取、その後以下のテストを行い刺激時唾液分泌量、唾液のpH、唾液緩衝能、唾液中のS.mutans量の変化をベースライン時と比較しキシリトールの効果を調べております。

グループ1 食後15分間キシリトールのガムを噛み刺激時唾液を採取
グループ2 食後15分間ロウの塊を噛み刺激時唾液を採取
グループ3
(コントロールグループ)
3分間ロウの塊を噛み刺激時唾液採取のみ行いそれ以外は何も噛まないグループ
研究結果
唾液分泌量 唾液pH 唾液緩衝能 S.mutans量
Baseline p value .8245 .0020 .0038 .2407
P value after chewing .1692 .0009 .1936 .0003
P value differences .1353 .0002 .0034 .0054

この研究から得られたキシリトールの唾液への作用について

  • キシリトールを噛むことで刺激時唾液分泌量はより増えるもののグループ間で有意差が出るほどでは無かった
  • pHの増加については噛むことで有意差が生じた
  • ロウを噛むよりキシリトールを噛むことでより大きくpHが回復した
  • キシリトールを噛むよりロウを噛んだ方が唾液中のS.mutansレベルの減少がより大きかった
  • 噛む事は刺激時唾液分泌量、pHの回復、唾液中のS.mutansレベルを減少させるには必要不可欠である

以上、この研究からキシリトールが虫歯予防のひとつのツールになることはもちろん、噛む事って本当に大切だということがわかります。
キシリトールを上手に利用して、ご家庭でも手軽に虫歯予防をしましょう。

特に虫歯に関しては検査を行うことで予防は可能です。まずは細菌学的に問題があるかないかをスクリーニングする為の唾液検査をお勧めします。(検査結果は患者様別に説明、報告書としてお渡しいたします。)

う蝕結果報告書

この唾液検査により虫歯の原因菌の数・比率、唾液の量・質が分かります。
また、唾液検査では判定不可能な飲食の習慣の問診も虫歯リスク評価には必要です。
 当医院で特に虫歯のリスクが高いと思われる患者様45名(成人)を対象に統計をとったところ何と58%の方に細菌より飲食の習慣・唾液の質が虫歯発症に大きく関与しているという結果を得ました。従って患者様の中には細菌を除去するだけでは予防不可能な方もいらっしゃると言えます。

「【唾液検査・食習慣についての問診】検査の結果を3タイプに部類」タイプ1:細菌学的に問題あり(細菌数・比率)、タイプ2:唾液に問題あり(唾液の量・性状・pH)、タイプ3:食習慣に問題あり(間食回数・食嗜好)
※もちろん患者様の中には全てのタイプに該当する方もいます。

更に患者様に理解していただけるよう当医院では虫歯リスク評価コンピュータプログラムCariogram(スウェーデン・マルメ大学D.Bratthall教授開発)を応用し患者様別にプログラムを組み予防・指導を行います。

30年間3ヶ月~1年ごとに予防歯科治療を繰り返し行った論文が2004年に発表されました。(Axelssonら)
その結果年齢によりわずかな差はありますが30年間で失った歯の数の平均が0.4~1.8本、そのうち虫歯が原因であった割合が6.9%、歯周病が原因であったのが5.2% でした。

「継続は予防なり」
予防歯科治療は言わば究極な治療と言えるかもしれませんね。

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