矯正歯科治療

現在の矯正歯科治療は年齢に関係なく治療が可能です。 そこで重要になるのが診断です。矯正歯科治療の診断のポイントとして、

  1. 顎の大きさ・位置、及び歯の大きさのバランスがとれているか?
  2. 治療開始年齢
  3. 口元の審美的ライン

が挙げられます。
まず、一般的な矯正歯科治療の流れについてご案内いたします。

一般的な
矯正歯科治療の流れ

※口腔内の状態により多少治療内容・治療期間は異なります

  1. 初診

    口腔内の診査を行い、主訴・治療に対する要望等の問診を行い一般的な矯正歯科治療について御説明いたします。その後精密な診査・診断が必要であると判断された患者様(一般的には小学校高学年以上)には資料(顔・口腔内写真・レントゲン写真・上下顎の歯型など)を採取いたします。

    資料サンプル

  2. 診断(治療計画)についてのご説明

    一週間後、採取した資料から得られた診断及び治療計画について御説明いたします。説明する主な内容として、

    1. 骨格的な不正が認められたかどうか
    2. お子様の場合、顎の成長が平均と比べてどうなのか
    3. 顎と歯との大きさのバランスはどうか
    4. 便宜上抜歯が必要かどうか
    5. 口元の審美評価
    6. 治療開始時期
    7. 使用する矯正装置
    8. 治療期間・治療費用
    9. 虫歯・歯周病の予防について

    が挙げられます。

  3. 動的治療開始

    診断から約1年~2年半後、診断・治療計画に同意が得られた患者様のみ矯正装置を装着し、治療を開始いたします。使用する矯正装置は異なりますがここから実際に歯を動かす矯正歯科治療が始まり通院は約4週間間隔となります。

  4. 動的治療終了、及び保定治療開始

    動的治療開始から約2年後、患者様により歯を動かす期間は異なりますがここで患者様の主訴が改善したことを患者様ご本人に確認して頂き矯正装置を撤去いたします。
    また、矯正歯科治療が終了したからと言って油断は禁物です。治療後の安定を図る為にはかかせない大切なステップが保定治療です。患者様御自身で取り外し可能な保定装置を使用して頂き通院は3ヶ月~6ヶ月間隔となります。

  5. 矯正治療終了

    ここで矯正歯科治療完了となります。この後も定期的なチェックを御希望される方は無料にてお受けいたしております。

    矯正装置も固定性のものから患者様自身で取り外せる装置と年齢や口腔内の状況に応じて使い分けております。
    特に成長・発育途上の小児の不正咬合は顎の変形につながる恐れもあります。お子様の噛み合わせを定期的にチェックしましょう。
    診断内容、治療方針内容をご自宅でも検討していただけるよう簡潔にまとめた御報告書をお渡ししております。

資料サンプル

初診で診査・診断が必要であると判断された患者様の資料サンプルです。

顔面写真(正面・側面・斜面)
口腔内写真(正面・左右・上下)
レントゲン写真(正面・側面・口腔内全体)
口腔内模型(上・下)

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矯正装置

白人に合った矯正装置が多く使用されている中、当医院では日本人の骨格に適応し科学的に裏付けのある矯正装置を使用しております。また、矯正歯科治療中のプラークコントロール・虫歯・歯周病へも迅速に対応いたしております。

矯正歯科治療、その前に…

子供の成長発育について

矯正歯科治療の対象患者様は子供から成人まで幅広いのですが“成長”過程にある子供の場合個別に成長状況を把握した後治療開始時期を決定、またその成長を治療に反映させる点が成人の矯正歯科治療と大きく異なる点です。従って一般的な成長発育、特に矯正歯科治療では成長による顎顔面の骨格の変化について熟知していなければなりません。
ここではごく一部ですが患者様ご自身で計測可能な身長の変化と顎顔面成長との関連性に限定してご説明いたします。

引用参考文献:(歯科医師の為の顎顔面成長発育読本 佐藤享至 著)

成長と発育の基本概念

(1)成長・発育の意味
成長発育を語る上でよく使用される発達・成熟も含め定義について確認しましょう

〔成長〕細胞自体の大きさが増すこと、または細胞数が増加してサイズや量が大きくなること
〔発育〕サイズの増加に関係なく機能が亢進したり、新たな機能を獲得すること
〔発達〕生物的機能よりも心理的、精神的側面が関与した形態、技能、行動変化のこと
〔成熟〕主に生殖能力の獲得を意味する身体、精神の成長発達のこと

(2)思春期とは
医学的な定義では、第二次性徴の始まりから性成熟まで(WHO 1970)とされ男女共思春期の定義と身長の増加には直接の関係はありません。

(3)成長を評価するための2つの概念
一般的には暦年齢を基準とした平均成長を成長評価に用いますが同学年でも身長の低い子供高い子供がいるように矯正歯科治療では個々の成長差を考慮した個成長を成長評価に用います。平均成長の評価基準が暦年齢だったのに対して個成長の評価基準は“生理的(生物学的)年齢”となります。その生理的年齢の代表が”骨年齢“です。身長、体重など一定の成長変化を示すものであれば生理的年齢になりえます。

身長でみる日本人の成長の特徴
図1 市身長増加速度曲線(歯科医師の為の顎顔面成長発育読本 佐藤享至 著より引用)

(1)日本人の体格の向上
昭和23年の17歳の身長平均値と平成24年の身長平均値を比較すると男子は10.1cm 女子は5.9cm増加しています。しかしこの20年間でいうと男子の変化はなくなり女子においても増加はわずか1mmに過ぎません。既に殆どの栄養素の摂取は100%を超えている事を考慮すると身長の増加は完全にストップしたと言えるでしょう。

(2)日本人の成長の特徴
個々の経年的身長変化を観察し最終的な身長を把握するのに用いる身長増加速度曲線(年間増加量曲線)で日本人の成長の特徴を見てみましょう。(図1)
身長の増加スパートが見られる年齢をtake off age, 身長の増加量ピーク時年齢をpeak height velocity age: PHV age ,身長の増加がストップした時の年齢を最終身長年齢final height ageと呼びます。

人種の異なるイギリス人を例に比較すると下の表に記したように身長の増加からみると日本人の方が6ヶ月~1年程度早熟であることが分かるでしょう。同時に女子は男子より2年早熟であることも分かります。また日本人女子の場合初潮年齢は12歳4ヶ月と報告されおりPHV age の約2年後であり初潮を発来している女子は既に成長ピークを超えている可能性が高いと思われます。

take off age PHV age final height age
日本人(男子) 9.5歳 12.7歳 16.5歳
イギリス人(男子) 10.2歳 14.1歳
日本人(女子) 8.2歳 10.4歳 14.7歳
イギリス人(女子) 8.6歳 11.3歳

成長に影響する要因

成長に影響する様々な要因について見てみましょう。

日内変動
図2 成長ホルモン分泌量の一日の変動(朝8時~翌朝8時)(歯科医師の為の顎顔面成長発育読本 佐藤享至 著より引用)

24時間周期で変動する生理現象で脳内の体内時計によってコントロールされていると考えられています。身長も朝の方が夜に比べ約2cm高くなります。
また様々なホルモン分泌、特に成長に最も関連の強い成長ホルモンの分泌も睡眠中に多く分泌されます。”寝る子は育つ”ということわざは科学的根拠があると言えそうです。(図2)

季節変動

足底~膝関節上端までの長さを測定した結果、春秋に成長量が大きく、夏冬に成長量が少ない季節変動が認められるそうです。また地域によっても違いが大きいようです。

週変動、心理的要因

心理的ストレスは成長に大きく影響すると考えられます。保護者からの愛情を確認出来ない状況に置かれた“愛情遮断症候群”、更に虐待などの極度のストレスを受けることによって成長障害は生じます。強いストレスを感じて睡眠が妨げられ成長ホルモンが正常に分泌されなくなっているのが原因と思われます。
週の中でも精神的にリラックス出来る週末に身長の増加を認め週変動も存在するようです。

最終身長の予測

ご両親にとってお子様の身長が将来何cmになるのかはとても興味があることでしょう。

ではいったい何歳の時の身長を最終身長と予測すればいいのでしょうか?
最終身長の概念は1年間において1cm以内の増加になった場合に最終身長に達したと考えます。すなわち身長増加速度が1cm/年以下になった時の値です。
平均的に日本人の男子は16.5歳、女子は14.7歳が最終身長年齢です。

身長の予測には多くの予測法が存在します。

(1)Target height法 (身長は遺伝的に決定されていることをベースにしている方法)
身長予測値 = (父親の身長+母親の身長+性差)÷2+世代間差 (単位:cm)
性差は男子の場合+13cm,女子の場合-13cmを代入

更に簡略化すると、

男子の身長予測値 = (父親の身長+母親の身長+13)÷2
女子の身長予測値 = (父親の身長-13+母親の身長)÷2

以上身長から見た成長の特徴を述べました。次にその身長と顎顔面骨との関連性についてですが体の成長度合いを各器官ごとに記したスキャモンの発育曲線(図3)に上顎骨、下顎骨の成長度合いを対比させると上顎骨は12歳時にほぼ成長が完了する一方下顎骨はやや遅れて成長が完了します。その下顎骨の成長様相と身長の増加に相関性が高いことがわかっています。身長の増加ピークのタイミングと下顎骨の増加ピークとはほぼ一致、ずれていても6ヶ月程度のようです。従って身長の変化を経年的に記録することで顎顔面の成長を把握し矯正歯科治療の診断、治療開始時期の決定に結びつけることが可能となります。
歯を動かす矯正治療にとってそのベースとなる顎の骨の成長を把握しできる限り予測することの重要性をご理解頂けたかと思います。

  • 図3 スキャモンの発育曲線
  • 図4
  • 図5

是非、図4,5の身長増加速度曲線を活用しお子様の身長管理に役立てて下さい。

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小児矯正 治療例

  • 小児矯正歯科治療例その1(上顎前突、取り外し式矯正装置使用)
    初診時年齢9歳女児
  • 小児矯正歯科治療は治療開始のタイミングが重要です。この症例のようにタイミングよく適切な矯正力・整形力を加えることにより短期間に予想以上の効果が得られます。
    もちろん症例により治療開始年齢は異なります。お気軽にお問い合わせください。

  • 小児矯正歯科治療例その2(交叉咬合、取り外し式矯正装置使用)
    初診時年齢8歳女児

    この症例のように1本だけが逆に噛んでいるのを改善することによって顎の正常な成長・発育を誘導します。もしこのまま放置されていると顎変形症に発展してしまう恐れがあり、このような不正は学校検診時に見落とされる場合もありますので注意が必要です。お気軽にお問い合わせください。

  • 小児矯正歯科治療例その3(反対咬合、取り外し式矯正装置使用)
    初診時年齢8歳女児

成人矯正 治療例

  • 成人矯正歯科治療例その1(衛生、固定式矯正装置使用)
  • 成人矯正歯科治療例その2(上顎前突、固定式矯正装置使用)
  • 成人矯正歯科治療例その3 (開咬、固定式矯正装置使用)
  • 成人矯正歯科治療例その4(過蓋咬合、固定式矯正装置使用)
  • 成人矯正歯科治療例その5 (反対咬合、固定式矯正装置使用)

    ※成人の固定式矯正装置による治療費は¥60~70万(症例の難易度等によります)

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