新型コロナウィルスのパンデミックからオーラルヘルスを考える
日本国内に緊急事態宣言が発令されて約1ケ月がたち日常生活が一変し当医院も”コロナ感染が心配だから通院は控えたい”との理由で通院が途絶えてる患者様もごく一部いらっしゃいます。この件も含め新型コロナウィルスについて私見を述べたいと思います(一部科学的な根拠に基づきますが情報源は新聞・報道・国会答弁など・・・)
昨年末中国武漢で人から人への感染が確認されその後症状のない人からの感染(不顕性感染)が報告された時点で終息にはかなりの年数がかかるなと覚悟しその後の報告よりこのウィルスの特徴が徐々に分かってきました。これまでの情報を整理すると、
①感染経路は飛沫、接触感染(感染経路は風邪症候群、季節性インフルエンザと同じ)
②空気感染の可能性はほぼない(4月29日の国会答弁でダイヤモンドプリンセス号の室内のエアーフィルターを解析した結果ウィルス量は検出限界値以下であった、と加藤厚生労働大臣が報告)
③死亡リスクは基礎疾患を抱えた50歳以上のやや肥満の男性が高い
④PCR検査陽性の方の8割は無症状・症状が軽い(多くの人は免疫システムで発症を抑えられてるようだ)
⑤ニューヨーク州、神戸市などの抗体検査の結果より実際の感染者数は公にされている数よりかなり多そうだ(死亡率は低くなる)
⑥一度PCR検査で陰性後陽性に転じる人がいる(PCR検査の限界?帯状疱疹ウィルスと同じように体内のどこかに潜伏しているのか?)
以上からこのウィルスからの感染を100%予防することはほぼ不可能でいつ自分が感染するかもわかりません。従って今出来る事は3密を避けワクチン、抗ウィルス薬が開発されるまでウィルスと共存するしかない、と考えます。4月24日のScience誌にはsocial distanceは2022年まで場合によっては2024年まで続ける必要性があると発表されました。残念ながらパンデミック前の平穏な毎日に戻るには数年かかるかもしれません。
しかし、そのような状況下だからと言って長期間口腔ケアを放置してよいのでしょか?その前に歯科医院における院内感染ルートを示します。
主な感染ルートは、医療従事者⇔患者様⇔別の患者様
今多くの患者様が心配されてる歯科医院=コロナに感染する?のは誤った認識で医療従事者のコロナ感染リスクが高くなっているのです。
1人も院内感染を発生させていない病院があるように医療従事者の感染予防意識を高く維持することはもちろんのこと院内の換気、接触部の消毒、エアロゾル対策、綿密な問診による患者様のスクリーニング、を徹底すれば月数回、定期的なクリーニングにいたっては年2~3回程度の歯科通院で感染リスクが高くなることはありません。歯科医院は大変クリーンな環境です。最も重要である患者様のスクリーニングはご家族含め厳密に問診し疑いのある患者様は治療延期のご相談をさせていただいております。患者様同士の感染リスクは今現在治療は原則1時間に2名程度、十分なsocial distance下にて行い濃厚接触の定義に準じ出来るだけ治療時間15分程度に短縮しエアロゾルの少ないであろう器具の使用にて対応しております。
歯科医院に通院したら感染経路が同じ風邪症候群、季節性インフルエンザに感染した経験のある方はほぼいないのではないでしょうか。飛沫・接触感染リスクの視点にたてばより頻度の高いスーパー、ドラックストアーの方がリスクが高いのではないでしょうか。患者様におかれましては歯科医院での感染を考える前に職場、上記の場所に行った後の手洗いの徹底、不用意に目、口、鼻、に触れない事が感染予防の最大のポイントかと思います。
口腔内を衛生に保ち続けないとウィルスの感染リスクが高くなることは以前より言われております。治療中断が咀嚼障害に発展しstay homeから間食頻度が増し口腔環境が悪化し免疫力低下に繋がる可能性すらあります。このような状況でもなぜ口腔衛生管理が必要なのか下記の資料、動画を是非ご覧になり継続的口腔ケアが新型コロナウィルス感染予防につながる事を知って頂きたいと思います。
東京歯科大学名誉教授 奥田克爾先生(微生物学)
20200421_prof_uokuda_SARS-CoV-2_influenza_dentistry_ver2
大阪大学大学院歯学研究科教授 天野敦雄先生(口腔分子免疫制御学)